アミロイドーシス: 内分泌疾患および代謝疾患: メルクマニュアル18版 日本語版
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アミロイドーシスは,種々の不溶性蛋白の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらの蛋白は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。まれに,いくつかの遺伝性代謝障害に起因する。診断には罹患組織の生検を行う。治療はアミロイドーシスの種類によって異なる。
病因,病態生理,分類
アミロイド沈着は,免疫グロブリン断片を含む少なくとも18種の異なる蛋白から形成されうる。アミロイド沈着は代謝的には不活性であるが,臓器の構造や機能を物理的に妨げる。全てのアミロイド沈着はコンゴレッド染色陽性で,ヘマトキシリン・エオシン染色でピンク色に染まり,コンゴレッド染色後に偏光下で黄緑色の複屈折がみられる。アミロイド沈着は,線維状で通常はまっすぐな非分岐性の超微細構造を呈する。また,X線回折によって観察されるβプリーツシートを形成する。沈着には,線維状のアミロイド蛋白に加えて血清アミロイドP成分およびグリコサミノグリカンも含まれる。肉眼による観察では,罹患臓器はろう様で半透明に見える。
3種の主要な全身型アミロイドーシスがある:原発性,二次性,および家族性である。また,2種の主要な局所型であるAβ型,AIAPP型(Ⅱ型糖尿病患者の膵臓に生じる),ならびにその他いくつかの病型(例,慢性血液透析に伴うAβ2ミクログロブリン)がある。
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原発性アミロイドーシス: ALは単クローン性形質細胞障害で,異常蛋白は免疫グロブリンであり,これは通常は軽鎖断片(ベンス・ジョーンズ蛋白)であるがときに重鎖断片(AHアミロイドーシス)のこともある。これらの鎖は異常な構造を有するか異常な処理を受けて,一部が不溶性沈着物を形成するようになる。一般的な沈着部位は,皮膚,神経,心臓,消化管(舌を含む),腎臓,肝臓,脾臓,血管である。軽度の形質細胞増加が骨髄に生じ,これは多発性骨髄腫を示唆するものであるが,大半の患者は真性の多発性骨髄腫(溶解性骨病変,腎尿細管円柱,貧血を伴う)には罹患しない。しかし,多発性骨髄腫患者の約10〜20%はアミロイドーシスも発症する。
二次性アミロイドーシス: この病型は,いくつかの感染,炎症,および悪性疾患(例,骨髄腫)に続発し,急性期反応物質である血清アミロイドA(SAA)の分解によって引き起こされる。一般的に原因となる感染には,結核,気管支拡張症,骨髄炎,ハンセン病がある。炎症性疾患には,関節リウマチ,若年性関節リウマチ,クローン病,家族性地中海熱がある。これらの疾患で産生される炎症性サイトカイン(例,IL-1,腫瘍壊死因子,IL-6)は肝臓で前駆蛋白SAAの産生増加を引き起こし,SAAは血清中を循環する。
AAアミロイドーシスは,脾臓,肝臓,腎臓,副腎,リンパ節を好発部位とする。肝臓,脾臓,腎臓はしばしば腫大して,堅くゴム状になる。心臓,末梢神経,自律神経の関与はまれである。しかし,病変の生じない臓器系はなく,血管病変は広範に及ぶこともある。
家族性アミロイドーシス: 家族性の病型は,変異型の血漿蛋白(最も一般的にはトランスサイレチン[TTR],したがってATTR)の蓄積に起因する。ほぼ全ての異常蛋白は肝臓で産生される。TTR遺伝子の変異が80カ所以上同定されており,いずれも常染色体優性様式で遺伝する。
発症年齢はきわめて多様で,10代から70代にわたる。ATTRアミロイドーシスは末梢の感覚神経障害および運動神経障害を引き起こし,しばしば自律神経障害も伴う。手根管症候群は一般的である。疾患の晩期には,心血管病変や腎病変も生じる。硝子体異常も生じることがある。
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それ以外のきわめてまれな遺伝性アミロイドーシスは,アポリポ蛋白A-1,リゾチーム,フィブリノーゲン,ゲルソリン,Aβ蛋白,およびシスタチンCを含むその他の生理的蛋白の変異に起因する。これらのアミロイドーシスは,全身または局所に様々な影響を及ぼす。
Aβ2ミクログロブリン(透析関連)アミロイドーシス: この病型は,通常は8年よりも長期にわたって血液透析または腹膜透析を行っている慢性腎不全患者に生じる。アミロイド沈着は,クラスⅠ主要組織適合複合体の構成成分であるβ2ミクログロブリンからなり,これは正常では腎臓で除去されるが透析膜では取り除けない。沈着は骨および関節の中とその周辺,ならびに手根管内に好発し,消化管や他の臓器にも認められている。
Aβ蛋白アミロイドーシス: これはアルツハイマー病患者に生じる。アミロイド沈着の正確な役割は不明であるが,アルツハイマー病に特徴的な老人斑にはβアミロイド前駆蛋白(膜貫通糖蛋白)のβ蛋白断片からなるアミロイド沈着が含まれる。β蛋白断片はときにアポリポ蛋白Eと複合している。斑内では,非線維型のβ蛋白と線維型のアミロイドとが混合している。
β蛋白アミロイド沈着は脳血管周囲にも生じることがあり,これは非高血圧性脳出血(脳アミロイド血管症)の原因であると考えられている。血管症は孤発性のこともあれば遺伝性症候群として生じることもある(オランダ型遺伝性脳出血)。
症状と徴候
症状および徴候は非特異的で,罹患した臓器または系に関連する。基礎疾患がAAアミロイドーシスの症状をしばしば不明瞭にする。
腎臓が罹患するとネフローゼ症候群が最も顕著な初期症状となる。初期にはごくわずかな蛋白尿しかみられないが,進行すると全身浮腫,低蛋白血症,大量の蛋白尿といった特徴的な複合症状が生じる。
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肝病変は無痛性の肝腫大を引き起こし,肝腫大は巨大なこともある(肝重量>7kg)。ときにアルカリホスファターゼが上昇することを除いて,肝機能検査は正常のままである。黄疸はまれである。食道静脈瘤および腹水を結果として伴う門脈圧亢進症がときに生じる。
心病変は拘束型心筋症をもたらし,やがて心不全につながる。心拡大および様々な程度の心ブロックまたは不整脈が生じうる。
末梢神経障害ならびに手指や足趾の感覚異常は,ALおよびATTRアミロイドーシスで一般的な初発症状である。自律神経障害は,起立性低血圧,勃起障害,発汗異常,および消化管蠕動障害をもたらす場合がある。
Aβ2ミクログロブリンアミロイドーシス患者のリウマチ様症状には,手根管症候群や,肩,手首,手指の慢性疼痛がある。病的骨折,特に上腕骨や大腿骨の骨折が生じることがある。
消化管アミロイドは食道,小腸,および大腸の蠕動異常を引き起こしうる。胃アトニー,吸収不良,出血,または偽閉塞も生じうる。巨舌症はALアミロイドーシスに一般的である。
橋本甲状腺炎のものに似た,硬く左右対称で圧痛のない甲状腺腫が甲状腺アミロイドーシスに起因することがある。肺病変(大半はALアミロイドーシスでみられる)は巣状肺結節,気管気管支病変,またはびまん性肺胞沈着を特徴とする。いくつかの遺伝性アミロイドーシスでは,アミロイド硝子体混濁や両側性波型瞳孔縁が生じる。
診断
アミロイドーシスは,臨床的に疑われるが生検でのみ診断される。腹部皮下脂肪の吸引および直腸粘膜生検が最良のアプローチである。その他の有用な生検部位は歯肉,皮膚,神経,腎臓,肝臓である。組織切片をコンゴレッドで染色して,偏光顕微鏡で特徴的な複屈折を観察する。同位体で標識した血清AP(APはアミロイドの五角形の成分である)は診断確認用のシンチグラフィー検査に使用できる。
予後
予後はアミロイドーシスの種類および関与する臓器系に依存する。多発性骨髄腫を伴うALアミロイドーシスの予後が最も悪い:1年以内の死亡が一般的である。未治療のATTRアミロイドーシスは10〜15年以内に致死的となる。他の家族性アミロイドーシスの予後は多様である。一般に,いかなる種類のアミロイドーシスも腎病変または心病変が特に注意が必要である。
AAアミロイドーシスの予後は基礎疾患の治療の成否によるが,まれにこのような治療を行わなくてもアミロイド沈着が自然消退する患者もいる。
治療
管理は一般に対症的であるが,基礎にある原因の治療がときにアミロイドーシスを沈静化させる。腎アミロイドを有する患者では腎移植が他の腎疾患のものに匹敵する長期生存をもたらすが,初めの数年間は死亡率が高い。アミロイドは結局提供された腎臓でも再発するが,きわめて予後の良好な被移植者もおり,最長10年間生存した症例もある。心移植は,慎重に選択された,重度の心病変を有するAL患者で成功している。
ALアミロイドーシス患者は化学療法で治療する。一般的なプロトコルでは,メルファラン0.075mg/kg,1日2回,およびプレドニゾン0.2mg/kg,1日4回を経口で使用する。高用量メルファランを骨髄移植または幹細胞移植と併用することで良好な短期成績が得られており,一部の症例では一見治癒したようにみえるものもある。
ATTRアミロイドーシス患者では,変異蛋白合成部位を除去することになる肝移植がきわめて有効である。
家族性地中海熱を伴うAAアミロイドーシスでは,コルヒチン0.6mg,1日1回または1日2回が有効である。感染由来のAAアミロイドーシス患者における基礎感染は積極的に治療しなければならない。癌(例,腎細胞癌)によるアミロイドの治療は癌に対して行われる。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月
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