2012年4月29日日曜日

黄疸


T.ビリルビン代謝

A.概略

ヘモグロビンなどのヘム蛋白は非抱合ビリルビンunconjugated bilirubin(UB)となりアルブミンと結合して肝へ運ばれる。肝細胞に取り込まれたUBは小胞体で抱合ビリルビンconjugated bilirubin(CB)となり、胆汁として排泄される。腸内で腸内細菌によって還元され、ウロビリノーゲン、ステルコビリンなどの色素となって、大部分は便中に排泄される。

B.ビリルビンの生成

ビリルビンの源泉には3要素ある。老廃赤血球由来UBは老廃赤血球が網内系の細胞に取り込まれて、そこで崩壊したヘモグロビンから生成され、ビリルビンの80%を占める。また、早期(シャント)ビリルビンが残りの20%を占め、これには造血性成分と非造血性成分がある。

造血性成分:無効造血(骨髄で生成直後に崩壊する赤血球ヘモグロビン由来)

非造血性成分:チトクローム、カタラーゼ

C.血中のビリルビン

総ビリルビンは直接型と間接型に分類される。UBは脂溶性で水には溶けないため、血中ではアルブミンに結合して運搬される。アルブミンは2ヶ所のUB結合部位を持っている。

D.肝のビリルビン処理

l       肝細胞の取込:肝細胞によるUBの摂取は細胞膜に存在するcarrier proteinによって行われている。取り込まれたUBは細胞内の結合蛋白と結合し滑面小胞体へ移送される。

l       ビリルビンの抱合:肝細胞の滑面小胞体でグルクロン酸を転移するbilirubin UDP glucuronyltransferase(BUDPGT)によってUBはCBに変化する。このようにビリルビンの抱合によって、ビリルビンは水溶性となる。


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l       肝細胞から胆汁への排泄:抱合を受けたCBは毛細胆管に運ばれ、ATP水解エネルギーに依存して能動輸送される。

l       胆汁中のビリルビン:胆汁中では約85%以上がグルクロン酸抱合を受けている。感染胆汁ではβグルクロニダーゼによってグルクロン酸抱合が解離し、ビリルビン結石の原因となる。

l       腸内のビリルビン:グルクロン酸による抱合型ビリルビンは腸内細菌により還元型となり、ウロビリノゲン(無色)、ウロビリン(褐色)などとなる。急性肝炎の黄疸期や閉塞性黄疸では抱合型ビリルビンが腸管へ排泄されないため、糞便は灰白色となる。ウロビリノゲンは大部分が糞便中に排泄されるが、一部は門脈から吸収されて肝臓に至り、そのほとんどは肝に摂取されて、再び胆汁に排泄されるが(腸肝循環:entero-hepatic circulation)、一部のウロビリノゲンは肝を通過して大循環に入り、腎から尿中に排泄される。

l       尿中ウロビリノゲンの増加:肝障害(肝疾患、熱性疾患)、ビリルビンの産生亢進(内出血、赤血球の破壊亢進)、腸内容の停滞(頑固な便秘、腸閉塞)など

l       尿中ウロビリノゲンの減少:肝炎の極期、閉塞性黄疸など

 

U.黄疸の分類と成立機序

A.黄疸の分類---重要!

1.       溶血性黄疸(シャント高ビリルビン血症):溶血や無効造血


ウェルブトリンうつ病

2.       肝細胞性黄疸:肝細胞壊死と関連した黄疸急性肝炎、肝硬変

3.       閉塞性黄疸(肝内・肝外):胆道系の機械的閉塞総胆管結石、胆道癌、膵頭部癌

4.       肝内胆汁うっ滞症:胆管系の閉塞や拡張のないうっ滞薬剤性肝障害、原発性胆汁性肝硬変

5.       体質性黄疸

間接ビリルビン優位:Gilbert症候群、Crigler-Najjar症候群

直接ビリルビン優位:Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群

l       黄疸の鑑別のポイント

 

)身体所見からUB性かCB性かの鑑別は不可能であるが、尿の色調はCB性では褐色調であるのにたいしてUB性では正常である。これは、UBがアルブミンと結合して尿中に排泄されないためである。

B.黄疸の発生機構

l       UB性黄疸

²      UBの生成過剰:早期ビリルビンと老廃赤血球由来ビリルビンからなる。種々の血液疾患でみられる無効造血と溶血性疾患の際にみられる。

²      BUDPGT活性の低下:体質性黄疸で高UB血症を呈するものはグルクロン酸抱合を行うBUDPGT活性が低下している。


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l       CB性黄疸

²      肝細胞性黄疸:CBの毛細胆管への排泄は能動的に行われているが、この駆動力となるATPが減少をする場合

²      胆汁うっ滞:病因は何であれ、胆管内圧が上昇するような病態では胆汁に排泄されたCBが肝細胞内へ逆流し、このため血中CB濃度も上昇することになる。

 l       黄疸発生機序のまとめ

        左から、正常、肝細胞性、閉塞性、溶血性

   

V.体質性(先天性)黄疸 congenital hyperbilirubinemia

A.UB性体質性黄疸

l       Crigler-Najjar症候群:先天的にBUDPGTが欠如しているT型とBUDPGT活性が低下しているものの、フェノバルビタールなどによってBUDPGT活性を誘導しうるU型(Arias症候群ともいう)に分類できる。T型は核黄疸をきたし予後不良だが、U型は治療により正常の生活を送ることが出来る。


l       Gilbert症候群:BUDPGT活性の低下を認めるが、Crigler-Najjar症候群のU型より軽度である。常染色体優性遺伝とされている。低カロリー(400Kcal/日に制限)試験で黄疸が増強することが診断に有用とされている。予後はきわめて良好で、治療の必要はない。

B.CB性体質性黄疸

l       Dubin-Johnson症候群:黄疸(5mg/dl程度)、黒色肝(Dubin-Johnson顆粒)、BSPの再上昇などをみとめ、常染色体劣性遺伝を示す。毛細胆管膜に存在するCB輸送蛋白に異常があって、CBの排泄に障害がある可能性が考えられている。経口胆嚢造影は不可能。Dubin-Johnson症候群の予後は良く、治療の必要はない。

l       Rotor症候群:黄疸(5mg/dl程度)、UB、BSPやICGなどの肝摂取に遅延が認められるが、再上昇はみられない。経口胆嚢造影は可能。細胞内結合蛋白の異常が原因と考えられている。遺伝形式は常染色体劣性遺伝を示す。Rotor症候群の予後は良く、治療の必要はない。

l            体質性黄疸のまとめ=先天性高(過)ビリルビン血症ともよばれる



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