肺炎球菌ワクチンQ&A(詳細解説)
01)肺炎球菌ワクチンとはどんなワクチンですか?
02)最近の肺炎の特徴と肺炎球菌ワクチンが注目されるようになった理由は?
03)肺炎球菌ワクチンの効果は?肺炎球菌ワクチンは効力が落ちる5年ごとに接種したらよいのですか?
04)副反応は?
05)世界や日本での接種状況は? 06)接種したほうが良いのはどんな人ですか?
07)肺炎球菌ワクチンの接種時期は?
08)費用はどれくらいかかりますか?
09)具体的にはどのように申し込んだらよいのでしょうか(当院の場合)?
10)実際の接種方法は? 11)どうして5年間しか効かないのですか? 2003.02.03追記
12)肺炎ワクチンはどの程度効果があるのですか? 2003.02.03追記
13)info-肺炎ワクチンが定期接種対象に追加されるように提案された 2004.11.20記
14)2歳未満にも有用な7価肺炎球菌ワクチン(PCV-7)とは? 2008.01.12記
参考資料
1)感染と抗菌薬vol4 No.3 sep.2001「ハイリスク患者の感染予防策〜肺炎球菌感染症対策を中心に〜」
2)読売朝刊『いきいき健康人』:肺炎ワクチン2001年11月18日、続・肺炎ワクチン2002年1月6日、続々 ・肺炎ワクチン2002年3月24日
3)萬有製薬HP :
4)細菌製剤協会HP:
5)CDC Pneumococcal Disease: Questions and Answers:
6)CDCPrevention Guidelines Topic(臨床ガイドラインなど): Pneumococcal Infections :
7) 肺炎球菌ワクチンに関するWHOの方針:
8) ドクターサロン46巻2002年8月号 (573-576)、「肺炎ワクチン」中村博幸(東京医科大学霞ヶ浦病院第五内科講師)
9)肺炎ワクチンについて
2001年?2月15日に東京で開かれた「肺炎球菌ワクチン研究会」の3人の発表を要約。司会=長崎大名誉教授 松本慶蔵
A:高齢者の市中肺炎で最も多い起炎菌である肺炎球菌に有効なワクチンです。肺炎球菌以外の病原体による肺炎には効果がないので、すべての肺炎を予防できるわけではありません。
日本人の死因の4番目が肺炎です。高齢者を中心に肺炎で亡くなる人は年間8万人に達します。 インフルエンザにかかった高齢者の1/4が細菌性肺炎になるとも言われています。 悪化が早い肺炎の場合は、治療薬の効果がでる前に死亡することが少なくありません。 肺炎の死亡率は薬や医療技術の向上などによって最近までは低下していました。しかし、近年再び上昇しています。
70歳未満の市中肺炎(※注1)の起炎菌はマイコプラズマという病原体が圧倒的に多く、肺炎球菌は2番目です。 しかし、70歳以上の市中肺炎の起炎菌は肺炎球菌が一番多く、インフルエンザ菌、嫌気性菌、緑膿菌と続きます(medical tribune 2002年8月8日)。 また肺炎球菌が引き起こす主な病気としては肺炎、気管支炎などの呼吸器感染症のほか、副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎などがあります。
「肺炎球菌ワクチン」は高齢者の肺炎の原因となる病原体のなかで、最も頻度の高い「肺炎球菌」という細菌を狙った予防ワクチンです。 当然ながら、肺炎球菌以外の微生物による肺炎の予防効果はありません。 くれぐれも「肺炎球菌ワクチンはすべての肺炎に有効ということではない」ことを理解してください。 さらにこのワクチンには「肺炎予防効果」とともに、肺炎球菌による「肺炎になっても軽症ですむ」、「抗生物質が効きやすい」などの効果もあります。肺炎球菌ワクチンとは、肺炎球菌によって引き起こされるいろいろな病気(感染症)を予防する効果のあるワクチンです。
日本では高齢者の重症市中肺炎の約50%、院内肺炎(※注1)の10%が肺炎球菌によるものです(河野 茂ら:日本内科学会誌87(2):4,1998)。 近年、ペニシリンなどの抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増加し、30〜50%にも及ぶと言われています。肺炎球菌ワクチンはこのような耐性菌にも効果があります。
1927年に最初の肺炎球菌ワクチンが開発され、現在日本では製品としては「ニューモバックス」(万有製薬)があり、どこの診療所でも簡単に入手可能です。肺炎球菌には80種類以上の型がありますが、肺炎球菌ワクチン接種によりそのうちの23種類に対して免疫をつけることができます。これですべての肺炎球菌による肺炎の8割ぐらいに有効です。
高齢の慢性肺疾患患者にインフルエンザと肺炎の両ワクチンを接種すれば、入院を63%、死亡を81%減らすとの海外報告もあります。インフルエンザワクチンとの併用が望ましいとされています。
※注1:入院中の患者さんが肺炎になる場合を「院内肺炎」と呼び、一般家庭で暮らす人の肺炎「市中肺炎」とはいろいろ異なることが多く、両者を区別します。
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A:1)マスコミの報道により肺炎球菌ワクチンの存在が広く知れ渡ったこと。2)抗生剤が効きにくい耐性菌による肺炎が増加していること。
2000年までの日本では医師ですらその存在を知らないことが多かった肺炎球菌ワクチンが、「新聞やテレビ放送で取り上げられ、2001年から肺炎球菌ワクチンを希望される高齢者が急増した」と薬品メーカーの担当者が話しています。
日本では肺炎球菌ワクチンの使用実績が少ないことから、患者数やワクチン接種の有効性・安全性に関する十分な調査が行われておらず、医療現場におけるワクチン接種の必要性などについての議論も十分になされていません。国内で接種が広がらない理由は、医師も含めて肺炎ワクチンの知名度が極端に低いこと、健康保険がきかないこと、予防接種の重篤な副作用に対する過度の不安があることの3点です。
近年、小児科領域での風邪や発熱に対して、抗生物質が多用されたために抗生物質の効きが悪い肺炎球菌(耐性菌)が増加し、すでに40%が耐性菌になっているとの報告があります。そして、耐性菌による肺炎が増加し、戦後一貫して減少し続けてきた肺炎の死亡数も近年増加に転じました。肺炎球菌ワクチンはこれらの耐性菌にも有効なので、抗生物質の補助的な役割としても期待されます。
これからの医療では疾病予防が重要性を増し、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンに代表される「高齢者への予防接種の重要性」は今後はますます増大するものと思われます。
A:5年で抗体価※注1(ワクチンの効果を示す指標)がピーク時の8割に低下しますが、5年以後も効果は残ります。なお、日本では2009年に再接種は認可されました。
抗体価は接種1ヶ月後で最高値となり、その後4年間はあまり低下しません。 5年後にはピーク時の80%にまで抗体価が落ち、以後徐々に抗体価は低下します。しかし、5年目以降も効果は残っています。 また、このワクチンには23種類の肺炎球菌(莢膜と呼ばれる細菌の表面の種類で分類)すべてに対して十分な免疫を獲得できるかは、個人差が大きいと言われていますので、みんなに同じ程度有効というわけではありません。
インフルエンザワクチン接種の場合には、2回目の接種で1回目以上に抗体価が上昇する「ブースター効果」がみられますが、肺炎球菌ワクチンではそのような増強効果はみられません。 逆に、短期間で再接種を行うと接種した部位での強い副反応が増加します。 再接種に関しては5年以上間隔をおけば副反応も減り、大丈夫なようです。
米国ではハイリスクグループについては再接種を勧めています。米国においては普通に免疫能を有する人が65歳未満で接種した場合で、65歳以上になり、かつ前回の接種から5年以上経過した場合のみ2度目の再接種を推奨しています。 が、
日本では再接種が許可されていませんでしたが、2009年に再接種が認可されました。
再接種の条件
初回接種から5年以上経過した次に示すような肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険性が極めて高い者及び肺炎球菌特異抗体濃度が急激に低下する可能性のある者を対象とする。
1)65歳以上の高齢者
2)機能的または解剖学的無脾症(例 鎌状赤血球症、脾摘出)の患者
3)HIV感染、白血病、悪性リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、全身性悪性腫瘍、慢性腎不全、またはネフローゼ症候群の患者、免疫抑制化学療法(副腎皮質ステロイドの長期全身投与を含む)を受けている患者、臓器移植または骨髄移植を受けたことのある者
ただし再接種時の年齢が10歳以下である鎌状赤血球症、脾臓摘出のような機能的無脾症又は解剖学的無脾症である小児、又はネフローゼ症候群、腎不全、腎移植のような初回接種後に抗体が急速に減少する小児については、前回の接種から3年後に再接種を考慮することが推奨される。なお、初回接種は2歳以上を対象としている。
www.kansensho.or.jp/topics/pdf/pneumococcus_vaccine.pdfより
※注1:ワクチンにより増強された血液中の免疫物質の量(力価)を示します。
追加・修正日2011.12.12
A:インフルエンザワクチン並に安全です。
安全性は高いといわれ、重篤な副反応は極めてまれです。よくみられる副反応には、注射部位のかゆみ、疼痛、発赤、腫脹、軽い発熱、関節痛、筋肉痛などがあります。接種日から2日後にかけて腕の疼痛などの局所反応は2〜3%、筋肉痛37.5度以上の発熱は10%以下です。多くは1〜3日で消失します。
ただし、過去にこのワクチンを受けたことのある人が短い期間で再接種した場合には、強い副反応がでるといわれているので、この点は厳重な注意が必要です。しかし、5年以上間隔をおけば副反応も減り、大丈夫なようです。
日本での重篤な副反応の報告は3例で、アナフィラキシーショックはなく、死亡例もない。重篤な副作用は、いずれも基礎疾患によるものか、副反応によるものかはっきりしないものでした。ニューモバックスでは、2例/1千万例の頻度でアナフィラキシー様反応(急激に起こる重篤なアレルギー反応)がみられたとの報告もあります。「初回接種はインフルエンザの予防接種と同じくらい安全」と考えてよいと思います。
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当院での接種は75歳以上の高齢者がほとんどですが、すべて皮下注射で行い、100例行って重症の副反応はありませんでした。
軽度の痛みや痒み、発赤が3人にみられ、3日以内に症状は消失しました。3人とも、全身状態は良好でした。「注射時の局所の痛みは、インフルエンザワクチンよりも少ない」という人がほとんどでした。
肺炎球菌ワクチン(23価ワクチン)の副反応 福見秀雄ほか、感染症学会雑誌58(6):495,1984 | ||
局 | 疼痛 | 40.5% |
腫脹 | 6.1% | |
発赤 | 4.3% | |
硬結 | 8.6% | |
熱感 | 12.3% | |
悪寒 | 5.5% | |
頭痛 | 4.9% | |
違和感 | 6.7% | |
倦怠感 | 13.5% | |
筋肉痛・関節痛 | 14.7% | |
37.5度以上の発熱 | 1.9% |
2004.01.27 追加更新
A:米国ではすでに65歳以上の高齢者の半分以上が接種しています。
世界保健機関(WHO)は肺炎球菌ワクチンの接種を推奨しています。米国厚生省(DHHS)の疾患管理センター(CDC)は、65歳以上の高齢者やハイリスクグループの人たちに、肺炎球菌ワクチンをインフルエンザワクチンと併用して接種するよう推奨しています。1999年アメリカではすでに65歳以上の半数以上の人が接種しています。
しかし、日本では「脾臓摘出患者の肺炎球菌感染症予防」以外にワクチン接種に健康保険が利かないこともあり、平成12年度の接種者は全国で4700人に過ぎません。また、再接種は禁じられており、自費であっても一生に1回のみの接種となっています(米国では一部再接種可:Q3参照)。
2004.01.27図追加
A:インフルエンザワクチン同様に高齢者が主体。
脾臓摘出以外の人でワクチンを接種することが好ましいと考えられる人(米国の勧告)は、高齢者(とくに65歳以上の方)、慢性呼吸器疾患、心不全、腎不全、肝硬変、コントロール不良の糖尿病、臓器移植を受ける人または受けた人、多発性骨髄腫などの血液疾患、後天性免疫不全症などの人です。 これらの人は肺炎などの感染症にかかりやすく、重症になりやすいことから肺炎ワクチン接種を考慮してもよいと思われます。
しかし、ワクチンの効果は一生高いレベルを持続するわけではないので、年齢が高いほどよい適応と当院では考えています。2002年現在は当院では75歳以上の人と70歳以上の心不全患者を主な対象として接種していますが、高い負担費用が問題です。
肺炎球菌ワクチンに関する米国疾病対策センター(CDC)の勧告(参考資料 MMWR 46:1-24,1997) | |||
推奨度 | 対象 | 再接種 | |
推奨度A | ワクチンの有効性が証明され、相当な臨床的な利益がある。 | ●65歳以上のすべての人
| ●ワクチン接種を受けたのが5年以上前で、しかもそのときの年齢が65歳未満であった人は、2回目の接種をする。 ●65歳未満では再接種は推奨されない。 |
●患者が10歳をこえている場合には、前回接種から5年以上経過していれば、1回再接種する。 ● 患者が10歳以下の場合には、前回の接種から3年後に再接種を考慮する。 | |||
推奨度B | ワクチンの有効性を裏付けるある程度の証拠がある。 | ●2〜64歳 で以下の慢性肝疾患、脳脊髄漏、アルコール中毒 | ●推奨されない。 |
推奨度C | ワクチンの有効性は証明されていないが、理論的に有効とされる。 にきびは完全に消えます | ●2〜64歳 で以下の免疫能の低下した人 HIV、白血病、リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、免疫抑制化学療法(副腎皮質ステロイドなど) | ●初回接種から5年以上経過していれば、1回再接種する。 ● 患者が10歳以下の場合には、前回の接種から3年後に再接種を考慮する。 |
禁忌 | 絶対禁忌はない。前回の予防接種でアレルギー症状を呈したもの、または、アレルギーを呈するおそれのあるものとある。 注射の間隔が短いとアレルギーが起こりやすいので、 将来再接種が合法化されても5年以上はあけること。 |
2004.6.7修正
A:年中いつでも可能です。
この予防接種は1年中いつでもできます。ただし、日本では予防注射の法律の関係でインフルエンザなどのワクチン接種時期から1週間以上あける必要があります。米国では左右の別々の腕にインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの同時接種が許可されています。
A:保険診療は脾臓摘出患者のみ、それ以外は自由診療のため値段はまちまち。
脾臓摘出の患者は保険適応があります。そのほかの人は全額自費です。読売新聞の記事によると6000〜9000円が相場だそうですが、別の記事では7000〜8000円が多いとありました。ワクチン購入代金や注射器、カルテ作成コストなど含めると、人件費抜きでも5500円はかかります。また、診察料金、消費税など別料金になっていることもありえます。
当院では詳しい説明を行っています。診察・説明代・消費税などすべて含めて総額7000円で実施しています。消費税や診察代が別料金として、加算される診療所・病院も多いので、最終的な支払い金額を確認して受けた方がよいでしょう。参考までに公費助成金のある市町村を下の図に示します。
2004.01.27図追加
A:説明と問診後に在庫があればすぐに接種します。予約は通常不要ですが、電話で確認していただければ確実です。
当院においては問診と十分なワクチンに関する情報を口頭ならびに印刷物で説明した後にワクチン接種を行うことにしています。その内容はこのホームページの内容とほぼ同じです。 現在のところ予約なしで来院されても、診療終了30分前なら当日に接種できています。当日〜3日前に電話予約をいただければより確実です。午前中は混み合うこともありますので、できれば午後2〜4時(木曜・土曜を除く)をお勧めします。
A:インフルエンザワクチンとほとんど同じ要領です。
インフルエンザワクチンと同様に、診察と説明の後に上腕の皮下(筋肉も可)に0.5mlのワクチンの注射を行います。いままでのところ高齢者の皮下注射では痛みはわずかです。急激なアレルギー反応が起こらないかどうか確認するために、万一に備えて接種後30分は当院待合室で待って頂きます。
接種後は「肺炎球菌ワクチン再接種禁止」のシールを老人手帳や健康保険証のカバー等に貼り、終了します。患者さんや家族には、「インフルエンザワクチンと併用すると肺炎予防効果が上がること」と、「肺炎球菌ワクチンは一生に一度しか接種してはいけません」と念を押しています。
A:正しくは、5年間以上有効です。効果持続が短いのは不活化ワクチンを使用しているためです。
現在ワクチンは、病原体を弱毒化した「生ワクチン」とホルマリンなどの薬剤処理で毒素活性を消失させた「不活化ワクチン」の2つに大別されます。
生ワクチンは「T細胞による細胞免疫」であるのに対し、不活化ワクチンは「B細胞による抗体産生」です。その特性を以下の表にまとめます。細菌ワクチンは不活化ワクチンが主流です。一方、ウイルスワクチンでは、生ワクチンが広く使用されていますが、不活化ウイルスワクチンも使用されています。
生ワクチンと不活化ワクチンの特性の比較 | ||
事項 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
誘導する免疫 | 主にT細胞による細胞免疫 | 主にB細胞による抗体産生 |
接種回数 | 1回投与により有効 | 数回接種 |
免疫の持続 | 永続性 | 一時的 |
製造工程 | 単純 | 精製行程を含め複雑 |
生産価格 | 安価 | 高価 |
保存性 | 不安定 | 安定 |
副反応 | 毒性復帰など時に重大 | 概ね一過性 |
対象病名・病原体 | ポリオ、麻疹、天然痘、風疹、黄熱病、おたふく風邪、水痘 | インフルエンザ、日本脳炎、B型肝炎、肺炎球菌 |
参考資料
肺炎ワクチンについて
2001年2月15日に東京で開かれた「肺炎球菌ワクチン研究会」より
2003.02.03記
A:15〜20%がワクチンで肺炎予防可能との報告があります。しかし、効果は完全には証明されていません。
肺炎球菌ワクチン接種により、肺炎球菌に対する免疫力(抗体価)が、感染を防御できるレベルまである人の割合は、接種前3.3%から接種後76.7%へと増加したと報告されています。 1980年の米国調査では肺炎の15〜20%が肺炎球菌ワクチンで予防可能であると推定されています。
65才以上の閉塞性肺疾患患者さんを対象に、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの併用効果を検討した Nichol によると、インフルエンザワクチン接種により入院率は52%、死亡率は70%低下した。 一方、肺炎球菌ワクチンを併用すると入院率は63%、死亡率は81%低下したなど、10%以上の上乗せ効果があったと報告しています。
Austrian らが南アフリカの鉱山労働者12,000名を対象にした成績では、ワクチン接種により肺炎球菌性肺炎は78%減少した。X線で診断された肺炎も53%減少していたと報告されています。
米国でのケースコントロール試験ならびに間接コホート試験でみるとデンバーでの結果を除き、ワクチンにより肺炎球菌性疾患が56〜81%予防できることが示されています。
高齢者に対する検討では77%の有効率を示したという報告がある一方で、効果は疑問とする報告も一部あります。 つまり、肺炎球菌ワクチンの効果は完全には確立されていないのです。
参考 肺炎ワクチンについて より引用
2001年2月15日に東京で開かれた「肺炎球菌ワクチン研究会」 東京専売病院院長 島田 馨 先生発表より
2003.02.03記
要約:2004年10月15日に開かれた厚生労働省の「予防接種に関する検討会」で、肺炎球菌ワクチンが努力義務のある定期接種の対象に追加するように提案された。
厚生労働省の「予防接種に関する検討会」(座長・加藤達夫聖マリアンナ医大) の初会合が2004年10月15日に開かれた。厚生労働省は「肺炎球菌」、「おたふくかぜ」などのワクチンを、努力義務もある定期接種の対象に追加するように提案した。2005年の夏にも結論をまとめ、予防接種の大幅な変革に繋がるという。重い副作用についての予防接種上の報告義務制度と、同様の副作用事例が相次いだ時の接種の緊急停止など、安全面も事項も検討課題となる。そのほか、障害接種歴を記載する手帳の導入、接種状況を評価する専門機関の設置なども議論される。
当院の意見
肺炎球菌ワクチン接種に地方自治体が補助金を給付することが普及しそうです。逆にいうと、「1-2年間、予防接種を待った方がよいかな?」。
参考 2004年10月15日 日経新聞(夕刊)、山陽新聞
2004.11.28記
要約:欧米では2歳未満にも有用なPCV-7が普及している。
米国では7価の肺炎球菌ワクチンPCV-7(商品名:Prevenar)は2000年に認可され、2001年から接種が本格化している。日本では2007年9月に製造販売承認申請がなされた段階である。
PCV-7は肺炎球菌の莢膜多糖体をCRM197という毒性のない変種のジフテリア毒素と結合させて、抗原性、免疫原性を高める工夫されている。PCV-7は七つの血清型の多糖体を含んでいるが、肺炎球菌感染症のうち菌血症の86%、髄膜炎の83%、急性中耳炎の65%に有効としている。
米国では2歳までに4回の接種を行うこととなっているが、欧州などでは3回の国もある。米国では2-5歳の感染リスクのある小児に対する接種も推奨されている。
PCV-7は髄膜炎、敗血症といった侵襲性肺炎球菌感染症の予防だけでなく、咽頭での本菌の定着を阻害する効果が期待されており、肺炎球菌による中耳炎の減少にも寄与するとされている。しかし、その一方でPCV-7の普及に伴い、七つの血清型以外の肺炎球菌および肺炎球菌以外のインフルエンザ菌type bなど他の菌による感染症の増加が危倶されている。
現在、肺炎球菌ワクチンはPCV-7以外に、他の7価のワクチンや9価、11価、13価などの新たなワクチンが研究開発されており、その中にはインフルエンザ菌や髄膜炎菌のタンパク成分と結合させたワクチンで、インフルエンザ菌や髄膜炎菌への感染予防効果を期待しているワクチンもある。
わが国では肺炎球菌ワクチン(23価ワクチン)はようやく普及段階となっているが、PCV-7は製造販売承認が遅れている。
表 PCV-7の適応(米国CDC) |
1)2歳以下の小児 |
2)ハイリスクの2〜5歳までの小児 |
・ハイリスク(侵襲性感染:>150人/100,000人/年) ・恐らくハイリスク |
参考 日本医事新報2007年12月29日号
2008.01.11記
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